「データドリブンマーケティング・その5」投資リターンを示せvol.1


最初の記事「データ・ドリブン・マーケティング・その1(成果をトラッキングする事の大切さ)」はこちら。

第5章「投資リターンを示せ」

第5章では、第3章で紹介した「10の伝統的なマーケティング指標」の中で、4つの財務系指標について具体的に、さらに突っ込んだ紹介しています。

詳しくは、第3章「10の伝統的なマーケティング指標」の記事をご覧ください。

財務系指標の解説だけあり、財務系の専門用語や計算式など沢山出てきくるので、マーケティングの本ではないように感じます。人によってはちょっと辛抱がいる章でしょう。

ただ、経営幹部へのプレゼンテーションで、この財務指標を上手く使いこなせれば、マーケティング・キャンペーンの予算確保につながる可能性が高く成ります。

 

利益

最も簡単な 利益の定義は、売上高ー費用で表されます。

経営者が最も興味があり、大事にしている指標かと思います。

 

マーケティング・キャンペーンで、この「利益」を上げられる根拠が示せたのなら、経営幹部からの支持も得らる可能性が高くなります。

多くの企業は、需要喚起を目的としたプロモーションに、多くの予算を割いていますが、あくまで利益を犠牲にして売り上げを伸ばしているにすぎません。

このプロモーションを採用してしまうと、ほとんどの場合、利益減の負のスパイラルに陥ります。

大切なのは、ある程度長期的なスパンで考え、ブランディングやカスタマーエクイティ(顧客価値)への投資を重視した施策を経営陣に訴える事です。

 

正味現在価値

あまり聞きなれない言葉ですが、本書では以下の様に説明しています。

正味現在価値=現在価値ー費用

各期において、収入から支出を 差し引いた利益を、お金の時間価値を反映させるために、割り、引き、足し上げたもの 

この説明だけだといまいち分からないかもしれません。

この場合、まず、現在価値に関して説明する必要があります。

 

現在価値とは

著者は、現在価値をゴルフの賞金を例にとって説明していました。

例えば、ゴルフの賞金が 100万ドルの小切手だとします。そして、あなたは優勝して、この賞金を受け取る事が出来ます。

この時、あなたには、以下の2つの選択肢があります。

  • 1. 10年間にわたって毎年10万ドルずつ受け取る
  • 2.52万ドルの現金を即座に受け取る

選択する上で大事なのは、「選択肢1:10年間にわたって毎年10万ドルずつ受け取る」場合の「現在価値」はいくらか?です。

そして、考え方の根幹として、

「今日の1ドルと 1年後の1ドルとでは その価値に差がある」

と言う事です。

私は最初、「為替や物価変動などのリスクかな」と思っていましたが、この本はもともとアメリカで書かれた本なので、為替リスクは関係ありません。

そうじゃなければ、1ドルの価値は、今日も1年後も同じ1ドルじゃないか(変わらないじゃないか)と思ってしまいます。

ただ、次の説明を読むと納得がいきます。

例えば、年利10%の投資信託があったとして、1ドルを元手に1年間投資すると、1ドルの10%のリターンが得られる事になります。

そうなった場合、今の1ドルは、1年後にもらえる1ドルよりも、1.1%価値が高いと言う事になります。

逆の考え方をすれば、1年後にもらえる1ドルは、今の1ドルよりも「1/1.1」分価値が低い事になります。

この式より、1年後の1ドルは、0.91ドル=1×1/1.1と言う事になり、これが「1年後にもらう1ドルの現在価値」となります。

ちなみに、この現在価値は、収益率によって変わります。今回はたまたま「10%」で計算しましたが、これが高くなるほど、年数による現在価値の減少が大きくなります。

 

10年間にわたって毎年10万ドルずつ受け取る場合の現在価値は

これまでの事を踏まえて、計算してみます。

約61.4万 =  10万ドル/(1+r)  + 10万ドル/(1+r) 2乗 + ・・・10万ドル/(1+r) 10乗

※rは収益率で10%とする

現在価値だけを考えると、「10年間にわたって毎年10万ドルずつ受け取る」を選択した方が得する形になります。

ただ、収益率20%の投資信託があった場合はどうでしょうか?それは、ご自身で計算してみてください。

 

決断にあたってはこれ以外の要素も検討する必要がある

現在価値は、重要な指標ですが、経営上の意思決定をする為の1つの指標にすぎません。

計算結果に加えて、現在置かれている状況や背景も含めて判断する必要があると言う事です。

なお、これまで「現在価値」に関して説明しましたが、「正味現在価値」は、この価値を得る為に発生する経費を差し引いた物となります。

やはり、マーケティング活動をする以上は、なんらかの経費が発生する為、それを加味したものが「正味現在価値」となります。

正味現在価値の計算式は、以下の通りと紹介されています。

正味現在価値=-B0 +(B1-C1)/(1+r) + (B2-C2)/(1+r) 2乗 + ・・・(Bn+Cn)/(1+r) n乗

Bは得られれる収益 Cはコスト

とまあ、正味現在価値のお話をしておりましたら、予想以上に長くなってしまったので、続きは次回の記事とさせていただきます。

最後までご購読頂きありがとうございました。

 

以上「「データドリブンマーケティング・その5」投資リターンを示せvol.1」のご紹介です。23