「データドリブンマーケティング・その10」必要な IT インフラ


最初の記事「データ・ドリブン・マーケティング・その1(成果をトラッキングする事の大切さ)」はこちら。

第10章「何が必要でいくらかかるのか」

第10章では、データドリブンマーケティングに必要な IT インフラと題して、どれくらいのコストが掛かるかという事を紹介しています。

当たり前かもしれませんが、基本的には、データドリブンマーケティングの目的やどういう結果を得たいか?と言った事によって、大きく変わってきます。

これは、Webサイトを作るときも、システムを構築する時も同じことが言えます。

本書では、顧客のライフサイクルを把握することが、データドリブンマーケティングの 目的の場合、エクセルを使って始めることができると紹介していますが、より高度な事を実現するには、データウェアハウスと解析基盤が必要となると説明しています。

 

必要なインフラは 戸建て住宅の規模か 高層ビルの規模か

本書では、データベースのインフラの規模は、「顧客数」と「要件の複雑さの度合い」の二つの軸により決まると説明しています。

ITインフラの規模を「戸建て住宅」「中規模マンション」「高層ビル」を例に手表現してます。最低でも「戸建て住宅」の費用が掛かるのか?と思うかもしれませんが、それは一端置いておきましょう。

まず、この規模の前提を見誤ると、後々失敗する可能性が高くなりますので、自社に最適な規模はどの程度かしっかり考える必要があります。

顧客数と言うのはシンプルで分かりやすいと思います。顧客数が多く成れば、それだけ多くのデータ量になる事も想像に難しくありません。

システムの拡張性を考えた設計

また、会社の成長と共に、顧客数も自然と増えていくものです。ここで問題なのは、システムの拡張性です。

顧客が増えた場合でも、柔軟にシステムを拡張できるように設計しておくことで、後々のトラブルを防ぐことが可能です。

少ない顧客数を前提に作成したシステムでも、多くのお客にも対応できるような仕様になっているかという事は、設計、構築段階で要件に含めるべきでしょう。

 

要件の複雑さの度合い

要件の複雑さの度合いと言うと、結局「何をしたいか?」によります。

シンプルな事が出来れば十分なのか?複雑な分析や回答を得たいのかです。

要件の複雑さの度合いが低い例

要件の複雑さ度合いの低い例だと、「何が、どこで、いつ、売れているか?」と言う事を知りたい場合は、比較的シンプルな要件になります。

必要なデータは、売上データで、項目としては、「製品、顧客、店舗、日付」の4つあれば、必要最低限な要件を満たすことになります。

逆に、要件の複雑度合いの高い例は、どんなものになるでしょうか?

要件の複雑の度合いが高い例

「ある顧客の顧客生涯価値はいくらか?」などの要件は、複雑な計算式と、多くのデータにもとずいて計算される情報を得たい場合、複雑の度合いが高く成ります。

「データドリブンマーケティング・その6」すべての顧客は等しく重要ではないのページでも紹介していますが、顧客生涯価値を算出する計算式は複雑です。

また、顧客の売上データだけでなく、顧客を維持する為の経費、解約率など、いろんな指標を加味する必要がある為です。

また、複雑さの度合いについて、「要件にリアルタイム性」が入ってくると、複雑さの度合いが10倍になると本書では説明しています。

そして、大規模なITインフラが必要な場合でも、いきなり大規模なITインフラを構築するのではなく、小さな規模から始める事を推奨しています。

まず、価値の80%を生む20%のデータについてのシステム構築をするという事です。

 

失敗パターンを予想して失敗を回避する

データドリブンマーケティングの関わらず、企業のITプロジェクトが失敗する事はよくあります。

本書では、失敗のパターン・原因は解明されていると述べています。その重要なリスクの要因をご紹介します。

  • データウェアハウスと導入する目的がしっかりと定義されておらず、フォーカスとビジョンが欠けている
  • 経営陣からのサポートと十分な予算が得られていない
  • 社内政治と社内文化に関する問題
  • 予算時間人材などのリソースの欠如
  • システムの拡張性の問題
  • 開発技術の問題 (新しい技術を使用したシステムや、間違った技術を選択してしまった場合)
  • スキル欠如(開発チームが必要なスキルを有しておらず、必要なスキルを身につけるのに適切なトレーニングを受けていない)
  • 既存のデータベースの質
  • 外注開発先への依存
  • 必要なスキルの変更及び人事異動(重要人物が人事異動でいなくなる)
  • エンドユーザーが参加しないことで発生するニーズ 要件に関する理解不足(開発にマーケティング部門が参加していないなど)
  • トレーニングの欠如(システム構築後の運用研修など)

これらのチェック項目は、さまざまなITインフラを構築する前の確認事項としても有効です。

 

第10章「必要な IT インフラ」のまとめ

第10章は「データドリブンマーケティングに必要なITインフラ」と言う大見出しになっていましたが、実際に、どんなITインフラが必要かという事はあまり具体的に説明されていなかったように思います。

それよりも、サブ見出しの「いくらかかるのか?」と言った内容にフォーカスが当たっていたように思います。

とは言え、小規模のシステムでも「戸建て住宅(数千万)」を例に出して説明している辺りで、データドリブンマーケティングが大企業向けの考え方だという事を痛感してしまいます。

それでも、拡張性を考慮しながら、小さな規模で始める事という考え方は、今後システムを構築する上で、十分に参考になると思います。

 

以上「データドリブンマーケティング・その10」必要な IT インフラのご紹介でした。