「データドリブンマーケティング・その11(終了)」マーケティングの予算・テクノロジー・プロセス


最初の記事「データ・ドリブン・マーケティング・その1(成果をトラッキングする事の大切さ)」はこちら。

第11章「マーケティングの予算・テクノロジー・プロセス」

第11章「マーケティングの予算・テクノロジー・プロセス」は、データドリブンマーケティングの最後の章となります。

全体的な内容としては、これまで(1章~10章まで)の総括的な内容となっており、今まで学んできたことを復習したり内容の整理をする章として最適です。

その為、これまで本書を読んできて、理解出来なかった事や、疑問に思っていたことが、この章で、すっきり整理される事が沢山ありました。

そして、この章では、データドリブンマーケティングを成功するには、組織の在り方が大切で、どのように組織能力を高めていくかという事を広く紹介しています。

 

マーケティングプロセスのモニタリング

ビジネスで継続的に成長していくには、優れたマーケティング戦略と事業戦略が必要ですが、それだけでは不十分です。

戦略が機能するには、すべてのマーケティング活動や事業活動が目的に向かって進んでいるかを、モニター(監視)するプロセスが必要です。

すべてのマーケティングを社内のどこからでもモニタリング出来るようにし、部署を超えて細部まで管理し、キャンペーンを最適化します。

特定のマーケティングキャンペーンを進めていく際には、その施策はうまくいっているかをチェックする必要があります。

 

マーケティングの管理に必要な組織能力

本書では、マーケティングの管理を適切に行う為に、組織に求められる能力を4つ上げています。

1.選択

マーケティングキャンペーンを選定し、投資を決定する。文書化されたプロセス、ビジネスケース及び事業戦略に沿っているかを判定するスコアカードの管理能力

2. ポートフォリオ最適化

実行するマーケティングキャンペーンの選定に利用する。全体的なポートフォリオ観点での評価及び実施能力
例えばキャンペーン Aは キャンペーン B と組み合わせるよりも、単独で行った方が効果的な場合、単独で実施するという選択をする

3. モニタリング

キャンペーンの進捗の効果測定と評価。簡単に言えば本書で紹介している指標を利用して、スコアを記録する組織能力

4. 適応学習

過去のキャンペーンや施策から学習した洞察を、将来のキャンペーンに活かす組織能力

これらの組織能力に加えて、それをサポートする役目として、テクノロジー(ITインフラ)などがあります。

テクノロジー(ITインフラ)は、管理プロセスをサポートする事が目的な為、テクノロジーに投資(先に導入)するだけでは、業績の向上は期待出来ません。

そして、これらの組織能力の内、もっとも大切な能力は、「モニタリング」になります。

マーケティングキャンペーン管理のプロセスを簡単にまとめると以下の様になります。

本書で紹介した15の重要な 指標によって、最も優れたマーケティングキャンペーンを選択し、キャンペーンがうまくいってるかをモニタリングし、試行錯誤しながら適応学習をする

 

成果の出るマーケティングプロセスを実現する

成果の出るマーケティングプロセスを実現する為には、以下の4つの壁があると紹介されています。

  • 1.経営陣からのサポート不足
  • 2.信頼の不足
  • 3.部門間協力の不足
  • 4.スタッフのスキル不足

経営陣からのサポートを得るには、信頼と理解が必要です。

信頼は、約束したことを実現したという実績から生まれます。その為、最初は小さく初めて、できるだけ早く結果を出すことで、経営陣の信頼を得られるようになります。

また、経営陣から理解を得るには、経営陣に理解されやすい言葉・用語・方法を使って、プロジェクトの成功が会社(事業)にもたらすベネフィットを説明する(語る)事も大事です。

これらで、「1」と「2」の壁をクリアする事が可能となります。

 

マーケティング管理プロセスの改善アプローチ

マーケティング管理プロセスには、3段階のアプローチ(レベル)があると本書では紹介しています。

レベル1初級

組織がすべてのマーケティング活動を管理するためのプロセスを確立する段階

このプロセスが確立できると、マーケティング資産、投資、リソースに関しての見方、評価が統一され、意思決定が明確になります。

モニタリングされていないマーケティングキャンペーンがなくなり、リソースの活用が効率化し、全体的な目標を立てることで、計画や管理のやり直しが減少します。

最後に、過去の失敗から学習しやすい業務環境となるため、マーケティング管理職によるマーケティング管理は、時間が経つにつれて向上していきます。

レベル2 中級

レベル2の組織は、マーケティング資産、投資、リソースを集約して管理できるようなっています。

また、個別の目的、目標を設定して、マーケティングキャンペーンの選択、管理をし、過去の失敗から学習できるようになっています。

レベル2のマーケティング管理は、マーケティング投資に対するリターンに関して、綿密な目的、目標を設定しており、マーケティング投資の計画管理、評価には、高度な指標を導入しています。

データウェアハウスを利用して、顧客と企業及び各マーケティングキャンペーンの関係、やり取りをトラッキングしています。

そして、どのキャンペーンに投資するかを選択する際には、チームメンバーの意見だけではなく、分析データも活用されています。

このレベルでは、マーケティングと企業戦略の足並みを合わせることで、結果の出ていないマーケティング投資を削減します。また、財務指標を使用して、企業の財務部門や経営幹部とのコミュニケーションをスムーズに行い、競合他社と、結果を比較することが簡単に出来ます。

レベル3上級

このレベルの企業は、マーケティングのキャンペーンを、ITインフラを駆使した自動化ソフトウェアを使用して、モニタリングしていることが大きな特徴になります。

キャンペーンの選択にあたっては、重要事業目的に関する スコアカードで点数をつけ、全てのキャンペーンを同じ土俵の上で評価・批評し、ポートフォリオ最適化によって、予算を追加すべき最適なキャンペーンの組み合わせを決定しています。

さらに イベントドリブンマーケティングを実践しており、アジャイルマーケティングの手法を取り入れ、キャンペーンの実施中に、常に利益やキャンペーンの価値をモニタリングし、柔軟にキャンペーンを軌道修正する事が出来ています。

このような企業には、学習を重視する企業文化があり、キャンペーン効果の測定がしっかりフィードバックされ、将来のキャンペーンに活かされています。

どうすれば、次のレベルに上げることができるか

まずは、マーケティング管理のあらゆる面において、組織のレベルを評価するためのスコアカードを用意することが第一歩となります。

次のステップは、スコアカードによって、重要な課題を抽出し、その課題に取り組むためのロードマップを用意する事が必要となります。

優れたロードマップには、目指すべき姿、ゴール、明確な技術、高度なツールと手法を段階的に導入するためのスケジュール、従業員が変化に対応できるようにするトレーニングといった要素が含まれています。

またゴールを達成するために必要なリソースの適切な見積もりと、それを確保する方法も、ロードマップに含める必要があります。

成功させるのに最も重要なコツは、焦点を絞り、そこで早期に成功実績を作って信頼を獲得し、成功体験から勢いを得て導入を加速させることだと本書では紹介しています。

 

調査からの学び、複雑さをコントロールする

組織が複雑になると、マーケティング管理も難しくなります。

経営陣がどのように情報を得て、どうやって意思決定をするのか、シンプルなルールを設定して運営する必要があります。

マーケティング管理は、スコアカードを利用して、事業部門の参加を促すというプロセスからスタートします。マーケティング管理が上手く行くと、事業戦略とマーケティングの足並みがそろい、成果が出やすくなります。

軌道に乗ると、スタッフが部門を越えて協力し合い、共通の指標を定義するようになり、キャンペーンの効果測定と計画立案のスキルが向上していきます。

高度なITツールを使用することで、データウェアハウス及び解析ツールの活用で、キャンペーンのスコアをつけることが可能となり、リアルタイムでマーケティングの軌道修正が出来るようになります。

最初からITインフラに手を出さない

組織能力の節でも説明した通り、ITインフラは管理プロセスのサポートをする為のものです。

その為、データドリブンマーケティングを始めようと、最初からITインフラに手を出すことは、著者も推奨していません。むしろ反対しています。

その為、まずはプロセスを定義し、小さくても結果を出し、その後プロセスと標準化、自動化するためにITインフラに投資をするという順番を推奨しています。

 

全ての要素を統合する

最後に、指標を活用することで、どうやってマーケティングキャンペーンの成果を向上できるかをまとめます。

第1ステップは、スコアカードを使って、成果を測定します。

測定することで、マーケティングをコントロールすることが可能になり、効果のないキャンペーンを止めて、効果のあるキャンペーンには、追加投資する事で、ポートフォリオを最適化出来ます。

第2のステップでは、アジャイルマーケティングのアプローチを取り入れ、短い周期で効果測定をして、軌道修正を行いながら、各マーケティングキャンペーンを最適化します。

第3のステップでは、解析マーケティングを導入して、動的なターゲティングやセグメンテーションを可能にします。

顧客価値ベースのグループを 、イベントドリブンマーケティングと組み合わせて、適切な商品を、適切なタイミングで提案することで、マーケティングキャンペーンの成果を向上させることが出来ます。

 

データドリブンマーケティングのまとめ

「アマゾン社員の教科書」と言うだけあって、とても読み応えのあるマーケティング本だと思います。

本書では、マーケティングの基本的な事から高度な事まで解説していますが、図解や事例と一緒に紹介している為、とても分かりやすく、比較的スムーズに読み進めていく事が出来ます。

気になったのは、紹介される事例が、ほとんど大企業の物なので、中小企業にあてはめたときに、どれだけ現実的なのかは、実際にやってみないと分からない事だと思います。

本の内容は新しい物ではない

「データドリブンマーケティング」と言う、私の中では新しいワードだった為、どんな革新的なマーケティングの話だろうと期待していましたが、考え方そのものは、昔からある内容に思います。

数年前からよく聞く「IoT」という言葉もそうですが、あれも以前は「ユビキタス」と言った言葉が似た様な意味を持っていました。

恐らく、「データドリブンマーケティング」も以前からある考え方だと思いますが、誰か権威や影響力のある人が、こういう手法を「データドリブンマーケティング」という名前にして、他のマーケティングと差別化しようとした事が切っ掛けかもしれません。

それは置いといて、やはりマーケティングは数学であり科学だなと思いました。大企業の中で、マーケティング担当者として出世していくには、最低でもこの本に書いてある事を実現する必要があるのだという事が分かりました。

この本を読み終わった後の行動が大切

マーケターとしてこれからどれだけ成長するかは、この本を読み終わった後に、どう行動するか?それ次第だと思います。

とりあえず、今までスコアカードを作った事が無いため、スコアカード作りから始めてみようと思いました。

 

以上「データドリブンマーケティング・その11(終了)」マーケティングの予算・テクノロジー・プロセスのご紹介でした。