こんにちは。Webloco代表兼Webマーケターのヤブです。
今回は最近私が読んだ「リサーチ&データ活用の教科書」と言う本を、復習(内容を整理)するという意味も込めて、内容の紹介や考察を記載していきたいと思います。
Contents
この本のターゲット
著者が考えるターゲットとは違うかもしれませんが、私が読んで感じた印象だと、以下の条件に該当する人がターゲットかなと感じました。
- 中規模以上の企業で働くマーケター
- 中規模以上の企業を相手にしているマーケティングコンサル会社の社員
- マーケティングの初心者から中級者
- マーケティングリサーチの初心者から中級者
この本は、ざっくりどんな内容か?
著者の「P&G」時代の経験(実体験)が元になっており、当時は売上が低迷していた商品ブランドや、新しく立ち上げた商品ブランドを、各商品カテゴリーのトップブランドにまでした成功体験を、「リサーチ&データ活用」というテーマで詳しく解説している本です。
リサーチ&データ活用の主な流れ
○現状理解
問題(理想と現実のギャップ)をあぶりだし、ビジネス課題を設定する
○アイデア出し(方向性の決定)
課題解決に繋がるアイデアを洗い出す
○検証
アイデアの成功率を計測して絞り込む
●アイデアの具現化(施策出し)
絞り込んだアイデアを具体的な施策に落とし込む
●検証
施策の成功率を計測して決定する
●実施(市場導入)
本書では、上記の一連のプロセスを「ダブルダイヤモンドプロセス」という名称で紹介していました。
初めて聞く名称でしたが、ネットで調べたら「デザイン思考」においては、有名な考え方の様です。
ダブルダイヤモンドプロセスの特徴
ダブルダイヤモンドプロセスの大きな特徴は、「ビジネス課題」を起点に「戦略作成」「戦術作成」の2つのフェーズで構成されている事です。
フェーズ1.戦略作成(方向性決定)
ビジネス課題を解決する為に、まずは課題解決の為のアイデアや仮説を沢山洗い出し、十分に広げた後、「リサーチ&データ分析」をして、成功率が高そうなものに絞り込みます。
この段階では、戦略ベースで、方向性を決めるステップです。
フェーズ2.戦術作成(施策決定)
「フェーズ1」で戦略(方向性)が決まったら、より具体的な戦術(施策)を沢山洗い出していきます。十分に広げたあと、「リサーチ&データ分析」をして、成功率が高そうなものに絞り込みます。
期待された効果が出ない場合は、戦術作成フェーズの中で、施術の改善をして、再度「リサーチ&データ分析」を行うというループを回す事も考えられます。
大事な事は「すぐに解決策の具現化に着手しない」という事。
多くの場合、課題が見つかったら、早く解決したいと思います。その為、アイデア出しはほどほどにして、且つアイデアの検証せずに、すぐに具体的な施策を考える事にフォーカスするケースが多い様に思います。
ダブルダイヤモンドプロセスは、多少時間が掛かっても、「アイデア出し」と「アイデアの検証」に時間を掛けて、より良いアイデアの中から、より成功率の高いアイデアを選択しましょうという考え方だと思います。
この方法、考え方が完璧かと言えば、そうではないですが、「1度動き出したらもう戻れない」、「失敗したら大きな損害が出る」と言った大規模なプロジェクトの場合、とても有効な考え方だと思います。
本書の気になったトピックスをピックアップ
レノア開発ストーリー
「レノア」と言えば、多くの人が知っている「柔軟剤」のブランドです。
本書では、「レノア」という新商品が誕生するまでの過程を詳しく紹介しています。
当時の「P&G」置かれている状況
2000年代の初めの頃は、柔軟剤市場は縮小傾向であり、「P&G」のシェアはわずか2~3%であった。
そこで、「なぜ、柔軟剤がうれないのか」を調査する事にした。
課題発見の為の調査
以下の調査対象に対して、それぞれの商品の違いについて、感じ方やイメージをヒアリング。
- 使い続けている人
- 使用頻度が減ってきている人
- 使うのをやめた人
- もともと使った事が無い人
また、新たな柔軟剤商品のアイデアをいくつもブレストして、以下の様な事を量的、質的に調査。その理由を深掘りする。
- こういう商品があったら買ってみたいか?
- この商品が出たら、ブランドスイッチをしたいか?
- こういう柔軟剤が出たら、もっと頻繁に使いたいか?
これらの調査・分析を重ねた結果、明らかになったのは、「柔軟剤が洗濯物を柔らかく仕上げるためのもの」だと認識されている事だった。
そして当時の柔軟剤は、自社の製品をつかうとどれだけ柔らかくなるかを競い合っていた。要は、どの商品も似たり寄ったりで、差別化出来ていない状態だった。
その結果、価格競争に陥りる事になる。
固定概念を打ち破る
これらの調査から、柔軟剤は「洗濯物を柔らかくするもの」と認識されてしまっていて、商品の違いが出せていない事が解決するべき課題であり、ビジネスチャンスの切り口である事に気づく。
ここで、「柔らかさ」を超えた別の付加価値をつける必要があるという、非常にシンプルなビジネス課題を探り当てた。
アイデア出し
ここから、どんな付加価値を付けたら良いか、いろんなアイデアを社内で出した。
- 臭いをとる
- 乾きが速い
- 臭を防ぐ
- 香りを楽しめる
- シワをとる
アイデアを絞り込む
洗い出した付加価値に対して「ユーザーニーズ」はあるのか、技術的に可能なのかを検証、検討して、アイデアを絞り込んでいく。
その中で「臭いを防ぐ」という付加価値はニーズもあり、技術的にも実現可能であった為、このアイデアに焦点を絞って、商品開発をしていく事になった。
数多くのプロトタイプ・改善を繰り返す
「臭いを防ぐ」といっても、以下の様にいろいろな要素がある為、沢山のプロトタイプをつくって、ユーザーに試してもらいフィードバックをもらうというプロセスを繰り返す。
- 防臭効果の成分や量
- 香りの種類
- 香りの強さ
- 液の色や透明度
また、作り込んだ商品を市場導入前に、売上予測モデルを使って、市場での成功率が十分に高いかを検証。
市場への導入
これらの工程を経て、柔軟剤の定義を「(単純に)洗濯物を柔らかくするもの」から「洗濯物を柔らかく、臭いを防ぐもの(繊維・衣類を向上させるもの)」へと進化させた「レノア」が発売された。
「レノア開発ストーリー」で分かる事
「レノア開発ストーリー」を読んで気づいた方もいると思いますが、まさに序盤で紹介した「ダブルダイヤモンドプロセス」を見事に再現しているモデルだと言えます。
当ブログでは、細かい説明は割愛しましたが、本書では、もっと具体的に記載がある為、「ダイヤモンドプロセス」を使った「ビジネス課題」の解決事例としては、とても参考になると思います。
本書のまとめ
大企業の消費者市場戦略本部という部門で、長年、手腕を振るってきて、多くの成功体験や実務経験がある為、とても説得力があります。また、事例と合わせて紹介している為、読んでいて分かりやすく理解しやすいのも好印象に感じました。
特に「ダブルダイヤモンドプロセス」や、当BLOGでは割愛しましたが「カスケードダウン(アップ)」などの考え方は、いろいろなビジネス課題の解決にとても役に立つ考え方だと思います。
ただ、事例はどれも「大企業」の商品ブランドで、小さな会社の場合は、事例をそのまま当てはめて使うのは難し為、会社の規模に合わせて、参考になる部分は参考にして、それ以外は自社の条件に合わせて調整する必要があると思いました。
また、「ダブルダイヤモンドプロセス」の考え方は、なかなか時間とコストが掛かる方法なので、状況に合わせて、「アジャイル」の考え方で動く事も必要だと感じました。
以上「「専門家」以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書」をお送りしました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。