こんにちは。Webloco代表/Webディレクターのヤブです。

本日は、2024年4月(2024年6月という意見もあり)に義務化の「Webアクセシビリティ」について、騙されない為に知っておくことをまとめました。

なお、「Webアクセシビリティって何?」という方は、「2024年に義務化「どうするWebアクセシビリティ」初心者にも分りやすく解説。」を最初にご覧ください。

この記事のターゲット

  • 営業マンからサービスを提案された方
  • 営業マンからWebアクセシビリティの改善を提案された方
  • 現在、アクセシビリティオーバーレイを導入している方
  • 会社のWeb担当者
  • Webサイトを所持している小規模事業主、個人事業主の方
  • Webディレクター、デザイナー、コーダーの方
  • Webアクセシビリティに関心のある方

 

この記事を書いた背景

2024年4月(2024年6月という意見もあり)にWebアクセシビリティが義務化される事を機に、Webアクセシビリティの関心は日に日に高まっています。

そんな中、このビジネスチャンスを逃しまいと、いろんな会社がWebアクセシビリティの対応や改善を謳ったサービスをリリースしています。そして、この流れは、義務化以降もさらに高まってくると思われます。

それらのサービスの中には、素晴らしいものもあるかもしれませんが、中には、Webアクセシビリティの改善にはあまり貢献しなかったり、巧みな営業トークで、相場よりも割高な金額の契約を取り付けるといった事も十分考えられます。

こういった事が起こる背景には、売り手と買い手との情報格差が一番の要因だと思います。

この記事は、その情報格差を少しでも埋めて、ブラックな会社に騙されない為に知っておくことをご紹介します。

 

騙されない為に知っておくこと

「アクセシビリティオーバーレイ」に注意

「アクセシビリティオーバーレイ」とは、Webページにとあるコード(プログラム)を埋め込む事で、即座にWebページのアクセシビリティを高める事が出来ると謳うサービスまたはソリューションの総称です。

話だけを聞くと魔法の様なサービスですが、現時点では、まだそのレベルに達していないのが現実です。

営業マンの謳い文句は「貴社のWebサイトに1行のコードを埋め込むだけで、アクセシビリティを向上できます。」「費用は月々〇円です。」といった感じでしょうか。

無駄なものにお金を支払い続ける事に

こういったサービスは、大概サブスクリプションタイプなので、サービスを利用している間は、ずーーーとっお金を支払わなければなりません。1月あたりの金額は、高額ではないにせよ、3年、5年で見ると、かなりのコスト負担になります。

営業マンから「アクセシビリティオーバーレイ」を提案された場合は注意する必要があります。

「アクセシビリティオーバーレイ」をもっと詳しくしりたい方は「アクセシビリティオーバーレイ」をご覧ください。

 

「アクセシビリティの対応は義務です」に注意

2024年4月(もしくは2024年6月)に義務化の予定なので、義務化以降によくありそうですが、自社サービスを売り込む為の謳い文句として、「Webアクセシビリティの対応は義務です。」という営業マンは多そうです。

確かに「アクセシビリティの対応は義務」ではありますが、正確には「合理的配慮の提供を的確に行うために、必要な環境の整備に努めなければならない」となっています。

このことより、まずは「環境の整備」と「合理的配慮の提供」の2つを理解する必要があります。

環境の整備

「環境の整備」とは、施設(階段や椅子、スロープ、手すりなどの)の整備と関係職員に対する研修の事です。

施設の中に、Webサイトも含まれており、Webサイトのアクセシビリティを高めようというのは、「環境の整備」に当てはまります。

合理的配慮の提供

「合理的配慮の提供」とは、障害者から求めがあった場合に、個別に対応してください。という意味です。

例えば、Webサイトのお問い合わせフォームが、ある障害を持つ方にとって利用しづらく、電話で対応してほしいと言われた場合、求めに応じて対応を行う事を言います。

上記の事を私なりに解釈するならば、「合理的配慮の提供を、的確に行えるレベルの環境が整えていれば、義務は果たしている。」とも言えます。

合理的配慮の基本的な考え方

合理的配慮とは、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。

どの程度が「過度な負担」なのかは、会社の状況にもよる為、一律の正解は存在しません。その為、アクセシビリティの義務化に関しては、部外者が「ここまでが義務ですから」と言うものではなく、「社内の判断で、ここまで目指しましょう。」と決める部分が大きいと思います。

そして、もう1つ大事なのは、利用者から改善してほしいという求めがあった場合は、改善する意思がある事が大事です。繰り返しの求めに対して、合理的な理由が無いのに改善をしない場合は、義務を果たしていないとみなされる可能性があります。

 

「対応しないと罰則がありますよ」に注意

自社サービスを売り込む為の謳い文句として、「対応していないと罰則があります。」と言った、恐怖心をあおるタイプの営業です。

対応していないからと言ってすぐには罰せられない

確かに罰則規定はあるのですが、以下抜粋によると、直ちに罰則を課すことはないそうです。

抜粋

この法律では、民間事業者などによる違反があった場合に、直ちに罰則を課すこととはしていません。

情報のソース

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答」の「Q7. 企業などがこの法律に違反した場合、罰則が課せられるのでしょうか。」を抜粋

 

罰則が科せられるときってどんな時?

以下の様な場合、罰則(20万円以下の過料)の対象になるとも記載されています。

抜粋

繰り返し障害のある方の権利利益の侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合など・・(略)・・罰則(20万円以下の過料)の対象になります。

情報のソース

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答」の「Q7. 企業などがこの法律に違反した場合、罰則が課せられるのでしょうか。」を抜粋

 

「2024年〇月に義務化なので急いだほうがよい」に注意

2024年〇月が近付いてくると、「義務化まで1カ月を切ったので急いだほうが良い」とあおってくる人もいるかもしれません。もしくは、上記の「対応しないと罰則があります」との合わせ技でせめて来るパターンも考えられます。

こちらも「対応しないと罰則があります」で紹介した内容と同じですが、アクセシビリティの対応は義務ではありますが、2024年〇月になって、対応していないからと言って、すぐに罰せられる事はありません。

上記の事より、義務化前、もしくは義務化後であっても、あまり焦って判断をする必要はないと思います。

ただ、義務化や罰則云々の前に、会社のイメージもある為、経営判断のプライオリティは高くして、なるべく早く検討した方が良いと思います。

 

「SEO対策に効果ありますよ」に注意

お決まりの営業トークとして「SEO対策に効果がありますよ」もよく言ってそうです。

結論から言って、Webアクセシビリティの対応は、正しくやれば、SEO(検索エンジン最適化)対策に効果はあります。

ただ、検索エンジンのランキング要因はとても沢山あり、アクセシビリティは数ある要素の1つです。仮に、現在のWebサイトが上位に表示されない1番の原因が、アクセシビリティに問題があったとするなら、アクセシビリティの改善で、目に見える効果があるかもしれません。

逆に、それ以外に大きな原因があるとするならば、アクセシビリティの対応をしても、あまり効果がありません。(ここでいう効果とは順位が大幅にあがるといった効果)

SEO対策はオマケ

いずれにせよ、アクセシビリティの対応を、SEO対策目的でやる事はあまりお勧めしません。あくまで、アクセシビリティの対応の副産物(順位が上がってラッキー)くらいに考えるくらいが良いです。

なお、Webアクセシビリティの対応はSEO対策に効果があると申し上げましたが、最初に紹介した「アクセシビリティオーバーレイ」は、現時点では、SEO対策の効果はほぼないと思ってよいです。逆に、クオリティの低いサービスの場合は、マイナスになる可能性も否定できません。

 

「新規ユーザー、新規顧客が増えますよ」に注意

「SEO対策」と似ていますが、「新規ユーザーが増えますよ」も営業マンの常套句として使われていそうです。

この営業トークも間違ってはいません。理由としては、アクセシビリティの対応をすると、今までアクセスできなかった人がアクセス出来るようになるからです。

問題は、今まで「アクセスしたいけどアクセスできない人」がどれくらいいるかです。仮に「10人」いた場合は、最大値として「10人」増える可能性があり、「1000人」いた場合は、「1000人」増える可能性があります。

ただ、実際に「アクセスしたいけどアクセスできない人」の人数を正確に把握するのは無理です。正確な数は、箱を開けてみないと分かりません。

新規ユーザー数の期待値を推測する

「アクセスしたいけどアクセスできない人」の人数を正確に把握するのは無理ですが、新規ユーザー数を推測する事は出来ます。

厚生労働省が発表している「障害者の数」を見ると、障害者の総数は936.6万人であり、人口の約7.4%に相当します。

「アクセスしたいけどアクセスできない人」を7.4%と仮定して、月間1000件のアクセス数(ユーザー数)のWebサイトに、アクセシビリティの対応をした場合、新規ユーザーの期待値は74件となります。

これは、平均で考えた場合なので、特殊な業界やターゲットが特殊であれば、大きく上振れも下振れもします。自社の状況に合わせてシミュレートしてみましょう。

新規ユーザーを沢山増やしたかったら他の方法で

Webサイトの活用具合や会社の規模にもよりますが、既存ユーザーに対する割合で考えると、アクセシビリティの対応で増える新規ユーザーは少ないと思います。

その為、新規ユーザーを増やしたかったら別の方法を検討するのが良いでしょう。

新規ユーザー数の期待値が少なくても対応はする

ここで誤解して頂きたくないのは、「新規ユーザー数の期待値が少ないから対応をしない」ではなく、「少なくとも対応はする」必要があります。

アクセシビリティの考え方は、「誰一人取り残さない」「誰でも平等にアクセス出来て、利用できるようにする」なので、少なかったとしても、社内で考えて、落としどころを探す必要があります。

この章で言いたいことは、新規顧客獲得の為にアクセシビリティの対応しても良いのですが、過大に期待してはいけないという事と、アクセシビリティの本来の目的は別であり、新規顧客獲得は、その副産物程度に考える事が良いという事です。

 

「格安でアクセシビリティに対応します」に注意

アクセシビリティの対応には以下の様にいくつかステップがあります。

  • Webアクセシビリティの方針をたてる
  • Webアクセシビリティの試験を実施
  • Webアクセシビリティの試験結果を公開
  • Webアクセシビリティ方針を達成する為にPDCAを回す

方針を立てたり、試験を実施するなど、1つ1つのステップで、かなりの労力がかかります。

その為、「貴社サイトのアクセシビリティ対応を格安(数万円)でお受けします。」とホームページに謳ってある売り文句を見て、「これは安い!」と思ってお願いしても、その価格で出来る事は限定的で、ほとんどアクセシビリティの向上は期待できません。

一応やったという自己満足は得られるかもしれませんが「表面的なもの」で「安物買いの銭失い」になりかねません。

アクセシビリティの対応に掛かるコストの相場

アクセシビリティの対応に掛かるコストは、既存のWebサイトによってさまざまです。一律に「〇万円くらいが相場です」と言えません。

その為、アクセシビリティの対応に掛かるコストの要素を知っておく必要があります。以下は、その要素になります。

  • 既存Webサイトのページ(コンテンツ)ボリュームと対象範囲
  • コンテンツの種類(テキスト、画像、動画、音声など)
  • 既存サイトのアクセシビリティの達成度合い
  • 目指す適合レベル(「A」「AA」「AAA」)
  • 目指す対応度合い(「配慮」「一部準拠」「準拠」)

まとめると、

既存サイトのページボリュームやコンテンツボリュームが多くて、
アクセシビリティを対応させる対象範囲が広くて、
コンテンツの種類が多くて、
既存サイトの達成度合いが低くて、
目指す適合レベルが高く、
対応度合いが高いほど、
より多くのコストが掛かります。

最終的には、いくつかの会社に相見積もりをして、相場観を知るしかないという感じです。

 

以上「Webアクセシビリティ義務化で『あなたが騙されない為』に知っておく事」をお送りしました。

最後までお読みいただきありがとうございました。