「データドリブンマーケティング・その6」すべての顧客は等しく重要ではない


最初の記事「データ・ドリブン・マーケティング・その1(成果をトラッキングする事の大切さ)」はこちら。

第6章「すべての顧客は等しく重要ではない」

第6章では、顧客生涯価値の指標の算出方法と、顧客価値価値をベースに、重要な顧客(価値の高い顧客)、価値の低い顧客などのセグメントに分け、それぞれに最適なマーケティング・キャンペーンを行う事を紹介しています。

要するに、重要な顧客(価値の高い顧客)ほど、重要視すべきと言う事を訴えています。

 

顧客生涯価値の定義

すべてのお客様は平等に扱うと言う企業もあれば、すでに価値の高い顧客(お得意様)は、特別扱いしていますという企業もあると思います。

既に、顧客に対して重要度を付けて管理している企業でも、多くは、売上高の大小を見て グループ化しているところが多い様に思います。

恐らく、それがもっとも簡単な方法だからだと思います。

顧客の価値を測る上で、FRM分析はよく登場します。購入頻度、購入額、直近の購入日の指標を基に、顧客を分類する方法です。

著者は、売上高の指標だけで、顧客を分類する事の問題点を指摘しています。それは

顧客対応コストを考慮に入れないこと

今日の売り上げは、必ずしも将来にわたってその顧客がもたらしてくれる 価値を表してないてこと

顧客生涯価値は、これらの問題を解消してくれます。

 

顧客生涯価値の計算方法

顧客生涯価値を求める計算式は下記になります。計算式をテキストで表すのは難しく、ちょっと分かりにくくてすいません。

顧客生涯価値 = – 新規顧客獲得費用 +  Σ(粗利益n – コストn)× 継続率n /(1 + 収益率)n乗

※n=1⇒N Nは年数

顧客生涯価値なので、「Σ(シグマ)」で、その顧客の価値を年数分足していく形(対象期間の総和を求める形)になります。

そして、nは1から始まり、Nまでの総和を求める形になりますが、Nの値は、3~5の値をお勧めします。

顧客生涯価値と聞くと、ある顧客が死ぬまで一生の価値と解釈して、50年とか入れるのではと思うかもしれませんが、未来はとても不確実なものとなるので、ある程度見通し易い期間で計算する事が良いです。

 

顧客価値ベースのマーケティング

あらゆるマーケティング活動において、顧客価値を考慮に入れることで 、中小企業でも大企業とのマーケティング 格差を埋める事が可能になるかもしれません。

顧客価値+αによるグループ化

顧客価値ベースのマーケティングにおいて最初の大事なステップは、顧客のグループ化。そしてどういう指標でグループ化すると言う事です。

冒頭で、売上高だけのグループ化は、問題点があると紹介しました。その代わりに顧客生涯価値を使って、グループ化する事で、問題を解決できるとも説明しました。

ただ、顧客生涯価値だけのグループ化もまだ十分ではありません。

大事なのは、顧客価値価値をベースに最適な指標との組み合わせです。本書では、「反応率」と言う指標と組み合わせて、顧客をグループ化した事例を紹介しています。

 

グループ化した顧客に対する対応

次のステップとして、グループ化した顧客に対してどんな対応をすればよいかと言う事です。

せっかく手間暇かけてグループ化したとしても、対応が間違っていれば、良い効果は望めません。

例えば、低価値顧客、中価値顧客、高価値顧客の3つの顧客にグループ分けしたとします。

そして、それぞれの顧客グループに対する大まかな方向性は

  • 低価値顧客には、低コストなサービスに移行を促す
  • 中価値顧客には、クロスセルやアップセルなどを行い、高価値顧客へ育成していく
  • 高価値顧客には、離脱をされないようロイヤルティを維持しつつ、クロスセルなどを行う

この方向性を基に、それぞれの顧客グループにおいて、具体的にどんなマーケティング・キャンペーンを実施するか考えて頂く形になります。

 

具体的なマーケティング施策の企画

顧客グループごとに、具体的にどんな事を実施すればよいか?それは、会社、業界、顧客によって大きく違います。

本書では、各顧客グループごとに、グループインタビューを行う事を紹介していました。

低価格顧客層の中からランダムで数人あつめてグループインタビューをして、ニーズを聞き出す。高価値顧客の中からランダムで数人集めてニーズを聞き出すといった具合です。

そうすると、顧客グループごとに、ある程度求めるニーズが分かると思います。

これをベースに、顧客グループごとに、具体的なマーケティング・キャンペーンの施策を練り上げていく形になります。

 

短期と長期での顧客収益性のバランス

顧客生涯価値がある程度高い顧客が、現在、会社に大きな利益をもたらしているかと言うとそうで無い場合もあります。

また、顧客生涯価値も低く、現在も会社にあまり利益をもたらしていな顧客(特に赤字顧客)に関しては、どう対応したらよいか悩ましいところだと思います。

本書では、低価値の顧客を機械的に切り捨てていく事で、将来の成長に繋がる顧客ベースを減らしてしまい、将来の売上を失ってしまった会社を紹介していました。

この場合は、現在の顧客価値を横軸、顧客生涯価値を縦軸にした2×2のマトリクスにして、判断する事が有効だと著者は紹介しています。

ここでも、現在の収益も低く、将来の収益が低い顧客は、低コストなサービスの意向を促し、コスト削減を実施した方が良い事になります。

 

顧客ライフサイクルマネジメント

顧客ライフサイクルマネジメントとは、新規獲得、育成、維持と言う、各段階に置いて、最適なマーケティング・キャンペーンを実施していく考え方です。

この3つのステップは、どんな顧客を対象にするかによっても変わってきます。

要するに、同じ新規獲得をするにしても、低価値顧客と高価値顧客のアプローチは変わってくると言う事です。(共通する部分もありますが)

これまでの話から、高価値顧客の獲得、育成、維持に資源を集中した方が、会社にとっては有益だよねと思いますが、会社にとって高価値顧客になりえる割合は一握りですし、それ相応のクオリティを求められます。

だからこそ、それぞれの顧客グループに対して、最適な施策を打っていき、どのグループでも利益を得られるようにしていく事が必要だと思います。

 

第6章「すべての顧客は等しく重要ではない」のまとめ

認知向上(新規顧客獲得)マーケティングや、需要喚起型マーケティングばかりに資源を集中している企業も多いですが、既存客に対するマーケティングこそ、中長期的にみて、会社の収益を安定的に成長させる方法だと考えさせられます。

マーケティングの本を読んでいると、既存客の解約(離反)を、バケツの水漏れに例えるケースが多いですが、コスト的にも、新しく顧客を獲得するよりも低く抑えられますし、利益の押し上げも高い様に思います。

一部の企業を除いて、顧客価値ベースのマーケティングにあまり予算を割かないのは、それを実現できる人材が社内にいないと言う事が多い様に思います。

要するに、それをやった方が良いのは分かっているけど、どうやったら良いか分からない。それを出来るだけのデータを所持していないなどのハードルを抱えているからだと思います。

その為にも、それを実現できるマーケターの育成が急務かなと思います。

 

以上「「データドリブンマーケティング・その6」すべての顧客は等しく重要ではないのご紹介でした、